消費者の購買行動モデルとは、人が商品やサービスを「知る」から「買う」に至るまでの心理的・行動的プロセスを体系化したフレームワークです。このモデルを理解することで、どの施策をどのタイミングで打てば最も効果的かが明確になります。
かつては「AIDMA(アイドマ)」に代表される単線的なモデルが主流でした。しかしスマートフォンの普及・SNSの拡大・生成AIの登場により、消費者の購買プロセスは複雑に分岐するようになっています。
「認知してすぐ購入」もあれば、「比較検討に数ヶ月かける」ケースもあります。Webマーケ担当者や経営者が施策を設計するうえで、時代に合った購買行動モデルを選ぶことが成果の差につながります。
この記事では、古典的なモデルから最新モデルまでをわかりやすく整理し、実際のマーケティング施策への活用法まで解説します。
📍 この記事のポイント
- 購買行動モデルの基本的な意味と、
マーケティングで使う目的がわかる - AIDMA・AISAS・SIPSなど主要モデルを
時代ごとに整理して比較できる - DECAXやAICASといった最新モデルの
特徴と施策への活用法がわかる - 自社に合ったモデルの選び方と、
施策への落とし込み方が理解できる
目次
消費者の購買行動モデルとは何か?
なぜマーケティングに必要なのか?
購買行動モデルとは、消費者が商品・サービスを「知る」→「欲しいと思う」→「買う」という意思決定プロセスを段階的に整理したものです。このモデルを共通言語として使うと、「どの段階の消費者に」「どんなメッセージを」「どのチャネルで届けるべきか」を設計できるようになります。
購買行動モデルを使うと
施策設計のどこが変わるのか?
モデルなしで施策を打つと、「認知が不足しているのに比較ページに予算をかける」「既存顧客に新規獲得用LPを見せ続ける」など、ズレた施策が生まれやすくなります。モデルを活用することで、施策の抜け漏れが見つかり、マーケ担当・営業・経営陣が同じ視点で議論できるようになります。
📖 用語解説:購買行動モデル(Consumer Behavior Model)とは
人が商品やサービスを購入するまでの考え方・行動の流れを、段階ごとに整理した図や枠組みのことです。マーケターはこのモデルを使って「今消費者はどの段階にいるのか」を分析し、適切な施策を設計します。
購買行動モデルが注目される背景:
消費者行動の複雑化とは?
スマートフォンが普及する前、消費者が情報に触れるチャネルはTV・雑誌・店頭など限られており、「広告を見る→興味を持つ→店舗へ行く→購入する」というシンプルなルートが機能していました。しかし現在は、SNSの口コミ・動画レビュー・インフルエンサーの推薦・AI搭載の比較サイトなど情報源が多様化し、単一のモデルで説明できないほど消費者行動が複雑になっています。
マスメディア時代の
購買行動モデルとは?
AIDMAを中心に解説
マスメディアが情報流通の中心だった時代に生まれた購買行動モデルの代表が「AIDMA(アイドマ)」です。1920年代にアメリカの広告学者サミュエル・ローランド・ホールが提唱したとされ、現在も基本的な考え方として広く参照されています。
AIDMAモデルの5段階とは?
各ステップの意味と施策例
AIDMAは、Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の頭文字を取ったモデルです。消費者が広告を目にして購入に至るまでの心理プロセスを5つのステップで整理しています。
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| ステップ | 英語 | 意味 | 施策例 |
|---|---|---|---|
| A | Attention(注意) | 商品・サービスを 認知する | TV CM・ディスプレイ 広告 |
| I | Interest(興味) | 興味・関心を持つ | ランディングページ・ ブログ記事 |
| D | Desire(欲求) | 欲しいという気持ちが 高まる | 口コミ掲載・事例紹介 |
| M | Memory(記憶) | ブランド・商品名を 記憶する | リターゲティング広告・ メルマガ |
| A | Action(行動) | 購入・申し込みに至る | CTA・限定オファー |
🗣 こんな失敗も——実際の現場から
Aさん(中小企業のWebマーケ担当)は、自社ECへの流入は増えているのに購入率が低い状態が続いていました。AIDMAにあてはめて分析したところ、広告(Attention)とカート機能(Action)には投資できていたものの、Desire(欲求)を高める口コミや事例ページが一切なかったことが判明。レビュー掲載ページを整備した後、転換率が改善したと話しています(具体的な数値はご確認のうえご記入ください)。
AIDMAの限界とは?
インターネット時代に
対応できない理由
AIDMAはマスメディア全盛期の発想であるため「Memory(記憶)」のステップが重視されています。テレビCMを見てもすぐ購入できなかった時代には「覚えておく」ことが重要でした。しかし、スマートフォン一台で即検索・即購入できる現代では、「記憶」よりも「検索・比較・シェア」が意思決定に影響します。
インターネット・SNS時代の
購買行動モデルとは?
AISAS・SIPSを解説
インターネットの普及とSNSの台頭に合わせて、複数の新しい購買行動モデルが提唱されてきました。代表的なのが電通が提唱した「AISAS(アイサス)」と、SNS特有の行動を反映した「SIPS(シップス)」です。
AISASは、Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)の5ステップです。電通が2005年に提唱したモデルで、AIDMAとの最大の違いは「Search(検索)」と「Share(共有)」が加わった点です。消費者は気になった商品をすぐに検索して比較検討し、購入後にSNSや口コミサイトでレビューを共有します。
📖 用語解説:AISAS(アイサス)とは
2005年に電通が提唱した購買行動モデルです。気になったものをすぐにスマホで検索し、購入後にSNSで感想を共有するというインターネット時代特有の消費者行動を5つのステップで表しています。SEO対策やSNS施策の設計に活用されます。
SIPSモデルとは?共感から始まる
SNS時代の購買行動
SIPSは、Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share&Spread(共有・拡散)の4ステップで、電通が2011年にSNS時代向けに提唱しました。従来の「広告を見た→認知」という流れと異なり、「友人のSNS投稿に共感した」「インフルエンサーの価値観に惹かれた」ことが購買の起点になります。
📊 主要モデルの比較まとめ
- AIDMA:マスメディア時代・記憶→行動の一方向フロー・TV・雑誌広告向け
- AISAS:インターネット普及期・検索・比較・シェアを含む・SEO・コンテンツ向け
- SIPS:SNS台頭期・共感が起点・拡散が重要・インフルエンサー施策向け
AI・コンテンツ時代の
購買行動モデルとは?
DECAXとAICASを解説
生成AIの普及・コンテンツマーケティングの浸透・パーソナライゼーションの高度化により、購買行動モデルはさらに進化しています。近年注目されているのが「DECAX(デキャックス)」と「AICAS(アイカス)」です。
DECAXモデルとは?
コンテンツとの出会いから
始まる購買プロセス
DECAXは、Discovery(発見)→Engage(関係構築)→Check(確認)→Action(行動)→eXperience(経験共有)の5ステップです。電通デジタルが2015年に提唱し、消費者がブランドからではなく「価値あるコンテンツとの出会い」で購買が始まる現代のプロセスを反映しています。
📖 用語解説:DECAX(デキャックス)とは
2015年に電通デジタルが提唱した購買行動モデルです。消費者が広告ではなく「役立つ記事や動画などのコンテンツ」と出会うことで購買が始まるという考え方で、ブログ・SEO・オウンドメディア施策の設計に活用されます。
AICASモデルとは?
生成AI時代の新しい
購買行動の流れ
AICASは、AI(AI活用)→Interest(興味)→Compare(比較)→Action(行動)→Share(共有)の5ステップです。消費者が「ChatGPT」や「Gemini」などの生成AIに質問して商品を絞り込み、その後に企業サイトや口コミを確認して購入するというプロセスが増えています。企業側の対策としては、AIに引用されやすい構造化されたコンテンツを作ることが重要です。
🗣 こんな失敗も——実際の現場から
Bさん(個人事業主・副業マーケター)は、業務効率化ツールの導入を検討するときに、Googleで検索するのではなくClaudeに「中小企業向けのプロジェクト管理ツールを比較して」と質問するようになったと話しています。「比較サイトを何個も見る手間が省けた。でも最終的には公式ページを確認する」というのがBさんの典型的な購買プロセスです。企業が「AIに正確に引用される情報設計」を意識する必要性を示す事例といえます。
自社に合った購買行動モデルは
どう選べばよいのか?
判断基準と活用のコツ
購買行動モデルは複数存在しますが「どれが一番正しい」というものはありません。自社の商品特性・ターゲット層・主要チャネルに合わせて最適なモデルを選び、施策設計の土台として活用することが重要です。
ここでは、モデル選びの3つの判断軸についてと購買行動モデルをマーケティング施策に落とし込む方法を解説します。
モデル選びの3つの判断軸とは?
モデルを選ぶ際は次の3つの軸で考えると整理しやすくなります。まず「主要集客チャネルはどこか」を確認します。TV・雑誌などマスメディアが中心ならAIDMA、Webサイト・ブログ経由ならAISAS・DECAX、SNS・インフルエンサー経由ならSIPSが適しています。次に「商品の検討期間はどのくらいか」を考えます。即購入が起きやすい日用品は短期モデル、BtoB商材や高額商品は長期的な関係構築を含むDECAXが向いています。最後に「AIで情報収集する読者が多いか」を見ます。デジタル感度の高いターゲットほどAICASに対応した施策が有効です。
購買行動モデルをマーケティング
施策に落とし込む方法とは?
モデルを選んだ後は、各ステップを現在の施策にマッピングします。たとえばAISASで考えると、Attention→SEO・Web広告、Interest→ブログ・LPの充実、Search→比較ページ・FAQ整備、Action→カートUI改善・限定オファー、Share→レビュー促進・SNSシェアボタン設置という施策が対応します。重要なのは各ステップの現状パフォーマンスを数値で把握し、弱いステップに集中投資することです。
購買行動モデルに関する
よくある質問(FAQ)
購買行動モデルについてWebマーケ担当者や経営者からよく寄せられる疑問をまとめました。
Q. AIDMAとAISASは
どちらを使えばよいですか?
主要な集客チャネルがWebかどうかで判断するとよいでしょう。自社サイトへの流入があり、SEOやコンテンツマーケティングを活用している場合はAISASが実態に近いモデルです。TV・雑誌などマスメディアを中心に使っている場合はAIDMAが参考になります。実際には両者を組み合わせて使うケースも多くあります。
Q. 購買行動モデルはBtoBにも
使えますか?
BtoBにも活用できます。ただしBtoBの場合は意思決定者が複数いること・検討期間が長いことから、関係構築を重視するDECAXや、ファネル型のカスタマージャーニーが適しています。BtoBでは各ステップの担当者(情報収集担当・決裁者など)を明確にしてモデルに落とし込むことがポイントです。
Q. 購買行動モデルと
カスタマージャーニーマップの
違いは何ですか?
購買行動モデルは「消費者の行動・心理の段階」を整理した汎用的なフレームワークです。一方、カスタマージャーニーマップは特定のペルソナが購買に至るまでの具体的な体験・感情・タッチポイントを可視化したものです。まず購買行動モデルで全体の段階を理解し、その後カスタマージャーニーマップで具体化するという流れが一般的です。
監修者:神藤浩史(じんどう ひろし)
バレーフィールド株式会社 取締役。デジタルマーケティング・生成AI活用を専門とし、中小企業のWeb戦略を支援。最新のSEO・AI動向を踏まえた実践的なコンテンツ制作を主導している。



